靴のサイズ表示について

 

 生活必需品である靴は、多くの人の足に合わせなくてはならない。足に合わせた靴を選ぶためにサイズ表示を設けている。

 

足と靴との合わせ方には、「A.存在する靴に足を入れ、実物対比の状態で探し合わせる方法と、「B.両者のサイズを数値的に明確にしてスムーズに探し合わせる方法」が考えられる。


 効率の良いのはBであり、Bを目標にしてサイズ表示をしている訳であるが、靴の場合は口で言うほど、容易な事ではない。

 

靴は、身体に合わせる物の中では、最高の難しさである。衣服とは異なり、密着性の強弱&個人の好み、体重を掛けて歩行する際の屈曲に対する靴内の適切な余裕の条件など、極めて難しい。そのため、世間一般に合う靴が無いの声は高い。

 

ちなみに現状の靴サイズの表示は、大中小を区別しているに過ぎない。

 

方向の区割りは、足長のサイズで表示する。例えば、日本では靴表示が23であれば、その靴には足長23cmの人が最も具合良く履ける靴という意味で区割りされている。海外では、足の全長ではなく、靴の全長を表しているものも一部ある。

 

横方向ではE,EE,EEEなどの記号の表示がある。しかし、一見しただけでは数値的な読み取りはできないので、業界規定書を見る事になる。

 

しかしながら、足対靴の合わせ所は何十箇所もあるで、縦と横だけの表示で足に合わせる事は実際には不可能である。

 

ところで、靴サイズ表示の数値は、どの様にして定め、記載しているのだろうか。

靴の状態は固定している様に見えるが、材料の伸縮や靴の変形を伴うため、測定が難しいものである。また、足に対する大きさは靴の内面部であり、測定は更に難しく、測定不能と言ってもよい。

代わりに、靴型の測定を実施することで、足に対する靴の数値を調べる事になる。

靴型は固体であり、正確に測定する事ができる。なお、靴型と靴は完全に同型ではなく製靴技術により差の出るものであるが、最も正確に靴を代弁できるのは、靴型測定の数値である。

 

しかし、靴業界では、靴型測定の習慣はないに等しい。正確な測定には、そのための測定規定や、専用の測定機器が必要であるが、それらを持ち合わせているところはほとんどない。

そのため、靴のサイズ表示は不正確である事が多く、靴型測定そのものを無視した思惑的なサイズ表示になってしまうこともある。

また、サイズを表示するために、社内の人間など、特定の人物足を対象にして定める事も多い。

 

もともと製靴技術は、全般的に感覚的技術であり、サイズ表示についても(所によりサイズ表示の規定は異なるが、どの規定も)曖昧なものである。

 

最近では、店頭で顧客の足型計測を行い、店頭在庫に足囲のタイプを大幅に増やし、足に合う靴を提供しようとするところもある。しかし、足合わせを期待するが、うまくいかない事が多々ある。

なぜなら日本人の足の統計データとは必ずしも一致していない靴型で、全長や足囲の種類を細かく用意している可能性があるからである

このような事態が起こるのは、そもそも足型のデータを靴型に反映する考え方、技術が曖昧で確立されていないという事が問題の根底にあると考えられる。

 

結局、数ある靴を何足も試着して、その中から一番合うものを買うしかなく、足に合う靴を探しているのに、いつのまにか履ける靴を買うしかない破目になってしまう。

 

今日、パソコン処理の足型計測機器の発達普及により、細部に及ぶ足の状態が分析され、足型数値は山積している。しかし、足型の数値化ができても、靴型&靴の方が縦横の曖昧な数値で表示されている状態では、対応する事はできない。

 

 

生活必需品である靴は、まず足に合い履きやすい、そして外観は環境と好みに合う、故障がなく廉価で購入できるの三大要素を満たすが大切である。

 

そして、「足に合い履きやすい」靴を作るために重要な事は、足と靴型の数値化であり、何よりそれらを合わせる技術の確立である。

 

これまでの感覚的靴技術を工学的靴技術に変換し、サイズ表示についても、足合わせの目安にとどめるのではなく、実際に使えるものにしていかなければならない。

 

 

 

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

 

 

<引用文献>

各務房男,「靴のサイズ表示について」,95頁.

 

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■部品「先芯についての考察 」2016/01/14追加しました。

 

■2016/01/07記事追加しました。

・所感、雑文「製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない