デザインの考案から型紙作成というのは、最も魅力のある作業である。靴の評価や、売れ行きに大きく影響するところであり、関心の高いのも当たり前である。
靴のデザインは、昔から欧州からの伝達が多く、今でもその模倣が主体で採用されている。デザインブックが氾濫し、その中から抜粋してデザインが定まる。当たり前のように行われていることである。しかし、いつまでも模倣でいては勝ち目がない。
まず、デザインを考案する際には、足との関係を重視すべきところがある。靴を履いて歩行する限り、靴の機能を落としてはならない。どんなに綺麗に見えるデザインでも、機能を害せば不可である。
靴である部位の範囲を考える。(一般の短靴)靴の性能を考慮する。
1.足入れ口最上位。足首に当たることなく、一番深いところの位置の確認(QBとJB)。
2.靴踵の深さ。足踵部について、当たらず、脱げ落ちない位置の確認(VD)。
3.トップラインの高さ。くるぶしに当たらない、トップライン位置の確認(Z2A)
4.前方屈曲点。歩行に伴う、前部屈折点の確認(UB)。
5.つま先先端点(NO)。
以上が足との関係で重視すべきところである(これら足型の基準的位置の表示については、ここでは省略する)。
これらを考慮して、靴のデザインを考案する。
デザインを考案する原点は、デザインの分析にある。靴デザインを構成する要素を分類し、整理することである。
まずは、形状について見る。
デザインとして呼称されたものを、区分整理する。
例えば、内羽根もの、外羽根もの、バンドもの、モカ型もの、ゴム入りもの、流れモカもの、などに区分する。
さらに、それぞれについて見てみると、内羽根では、ひもを通すハトメの個数、ハトメの表と裏(金具が表に出ているデザインかどうか)、などの区分がある。
バンドものではバンドの位置、バンドの幅、バンドの本数、バンドの形状(真横、斜線、カーブ)のように区分して見る。
パンプスのトップラインでは、前えぐりの位置と形状、(丸、ハート、角、斜角)が区分の対象になる。
形状の次には、作業仕立てについて見る。
例えば、ふちの処理については、折り込み、切り放し、テープ取り、ぎざ抜きなどがある。他には穴飾りなどがある。
縫い方でも、方法が区分できる。袋縫い、細糸縫い、太糸縫い、並び掛け、手縫い、などがある。
また、感覚的には、印象として、強く感じるもの、弱く感じるものの区分もある。
さらには質感や色別では、千差万別のものになるだろう。
このように、内容を分類し、デザイン要素として整理する。そして、これらのデザイン要素を組み合わせれば、デザインは無数になる。デザインの考案は容易になり、他の模倣に明け暮れることはない。
(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)
<引用文献>
各務房男,「アッパーデザインの発想について」,第3版25頁.
各務房男,「デザインの考案と靴型表面への描写」,第6版7頁.
各務房男,「靴デザインの基本点」,第6版91頁.