外反母趾対応のくつについて

 外反母趾、この言葉は今や知らない人はない。新聞にも、テレビにも随分と出てくる。

 大変な足の形であり、気になることである。また大多数に存在することは、靴を作る者として重視すべき問題である。医学的なことは、門外漢の靴技術者にはわからないが、関係の深いことであり、聞き捨てにはできない。

 

 元々、外反母趾の発生原因は、遺伝性が強いとか、ハイヒールを強く挙げることもある。 遺伝性については、部外者には詳細なことはわからない。

 細い三角形の中に足を入れて、押し込めば、外反母趾の形になりそうなことはうなずける。

 ハイヒールの挙げられることは、踵が高くて、足が前方に滑りやすく、靴の先に足が「押し込まれる」からである。「前方に滑らず、押し込まない」、これも、大切な対応の一つである。

 

 随所でよく聞き見る、“外反母趾対応の靴”とはどのような靴か。例えば、外反母趾にならない予防的効果を狙った靴なのか、外反母趾そのものの足に合うという靴なのか。大きく二分されると思う。両者の差異は大きく、単に“外反母趾対応の靴”で表示できるものではない。明確な表示が必要である。

 

 予防効果を目標とする靴についてであるが、どんな靴でも、誰でも外反母趾にはなりたくない。

 これは、基本的な靴設計条件の中に当然あることである。あえて言えば、つま先の細い靴は敬遠する。特に先が細く、踵の高い靴は避ける。

 体重がかかった時に前方へ滑り、つま先に圧力の掛かることは、靴の中で足の移動が大き過ぎるということである。つまり、足と靴とが合っていない証拠である。

 足と靴とが合わないポイントは、幅の関係や甲囲の関係だけではない。

 足と靴の、凹凸の位置と、縦カーブが合うかどうかが、大きな見どころである。

 

 外反母趾そのものの足に合う靴は、前提条件として、まずは外反母趾の局所部を除き、足と靴とが合っていなくてならない。そして次に、外反母趾局所部に対応することである。

 やはり、重要ポイントは、靴の中での、足の移動状態である。靴の中で、足が不自然に移動しないようにするということが大切である。

 

 ではそれは、どのような靴になるのか。

 まずは足が靴の中で移動しないための対応として、靴型の形状を考える必要がある。

 専門的な説明になるが、踵高寸法に対する踵面角度を、やや平らにする。踵面の落差寸法のC線を深く、J線を浅くする。

 

 踏まず線のKP線の密着度を強くし、内ふまずの密着を図る。 EGG寸法は若干の余裕を見る。MGGは、内側より外側から押し込まないように注意する。爪先は広くして前方の余裕を見る。

 

 底面の断面線は、台形にして足の横移動を防止する。トウスプリングは、やや高めに設定して足が前に滑りにくくする。そして、甲囲のLGG寸法はぴたりとしてしっかりととめれば、足は前後に動かない。

 次に、靴の中敷きは、滑らない材質にして、確実に靴に貼り付ける。靴のデザインは、足の甲をひもで締める羽根短靴が良い。足首バンドも効果的である。いずれも、足が前へ滑らないようにするためである。

 

 そして、局所凸部の位置を確認し、その部分のアッパー素材を伸ばすのも効果がある。また凸部の周りにドーナツ形の輪材を貼り、凸部の頂点と靴のアッパー素材の接触を防止する。

 

 以上のことを考慮した靴が、外反母趾そのものの足に合う靴ということになるだろう。

 

 なお、外反母趾の形状もそれぞれ、人によって、大きな差があり、一概に合わせられる問題ではない。結論的には、外反母趾にならないための靴の存在は重要である。外反母趾自体の足には、既製靴での対応は無理、困難を感じるものである。

 

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

<引用文献>

各務房男,外反母趾,「対応の靴についての所感」,第4版5頁.

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■部品「先芯についての考察 」2016/01/14追加しました。

 

■2016/01/07記事追加しました。

・所感、雑文「製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない