製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない

 巷には靴教室が乱立気味である。そこで何が勉学出来るのか、何を勉学したいのか様々であるが、靴教室が教える内容は、共通して、感覚的靴技術、欧州が一番と言われている欧州風の技術内容である。

 

製靴技術を大別すると、組立て工作的な分野と、設計分野の技術とに分けられる。

 

組立て工作では、手製作と機械製作に分けられる。手製作とは、主として小道具を使うが、若干の機械も使う事になる。

 

 靴の設計分野の技術(靴型、本底、中底、各芯材、ヒールなど靴資材全般の設計技術)は、世界共通的に、感覚的手操作で設計されている。一部にパソコンも使うが、限られた項目であり、普及状態も限られており、企業では、特別に設備されたパソコン室にパソコンがあることもあるが、個人的技術者机上にパソコンの有る事は、極めて稀な事である。ほとんど利用されていない。

 

ましてや、靴を教える靴教室の勉学内容には、パソコン活用技術はまったく無い。

 

 欧州が一番と欧州に出掛けて勉学しても、習得技術はあくまで感覚的手操作であり、パソコン活用技術の習得は無い。

ところで、現状の製靴技術のレベルはどの位か。

 

他産業技術と比較するとき、その遅れははなはだしい。

 

製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない。発展したのは、量産系の機械設備の技術ばかりである。靴設計の技術は発展していない。

 

個人的頭脳内の感覚技術が推移してきた事が、製靴技術の遅れの原因である。業界の長老名士有名人、研究会の指導者などは皆、感覚技術の達人上がりで、その技術の恩恵で今日の地位を得た人層である。

 

伝統技術が捨て切れず固着していれば、新技術の導入は遅くなり、今日の様になる。

 

靴雑誌を見ても、欧州の伝統名声の賞賛ばかりである。名人芸を持つ者が頂点に君臨し、靴の外観容姿の評価で明け暮れている。新技術&パソコン活用記事は皆無の状態である。昔が懐かしく、昔に帰れと言わんばかりの記事構成である。

 

昔から、暗黙裡の了解で作業の進む製靴技術である。技術は盗む物、質問をしようものなら素人扱いとなり、解らなくても解り顔をする様になる。

 

個人の習得した技術は、他人に教える事ではないという者がほとんどで、技術伝達&人材育成が進まず、感覚的靴技術のまま現状に推移している状態である。

 

靴教室で、質問もままならぬまま、感覚的に技術を習得し、何年か経過すれば、次期の指導員に抜擢される。それでは、教える内容は順次に貧弱になるだろう。

 

製靴業界も、他の先進産業技術に倣って、パソコン活用を図るべきであるが、その動きは全く無く、出来ない環境にある。

 

筆頭の理由は、有効ソフトの無い事である。企業にあるパソコン室を見ても、経費の問題、優良ソフトの不在、指導員の皆無など、これでは進展は難しい。

 

パソコン活用を進めることは、靴業界全体の課題であるが、個人技術がわざわいし、公的な動きにならない。

 

ここにサンプルとして"かがみ式"技術開発ソフト群が存在するが、感覚的技術集団から見れば、近寄り難い"かがみ式"であるようで、見聞の希望者はいない。

 

口頭説明では解り難いが、ソフト稼働を見れば、一目瞭然、成果の差異は歴然とする。伝統名声とは無関係な技術である。活用の担い手として、後進者&新人にもチャンスあり。面白い競争になるだろう。

 

近隣諸国の廉価な靴攻勢に、どの様に対応するのか、新技術の導入をせずに、ベテラン技術者名人が、どの様に対応するのか興味深い事である。

 

 

 

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

<引用文献>

各務房男,「製靴技術の勉学に付いて」,第4版6頁.

 

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