部品

先芯についての考察

 製靴の中での先芯の存在は、重要なことには相違ないが、部品単価が安いことと、靴表面から見えないということもあって、注目の度合いは低いように思われる。当たり前のものとして、あまり気にしないで処理しやすい所である。しかし、靴の良否に関して先芯を分析して見ると、無視出来ない大切な事柄が多い。当たり前としてきたことで、認識不足の点が多々存在する。

 

 先芯の役割のひとつは、中底の上に足を真上から乗せ、横にズレ動かないようにすることである。足の力を無駄なく地面に伝え、歩行を円滑にするためには、足が中底から横滑りしてはならない。また大地を蹴り出す力は、靴爪先が曲がってはならない。

 

 また、先芯は、靴の頭部の形状を維持するものであり、靴型表面から形状が移行しデザイン的美的要素の一任も果たしている。なお、形状の維持固定は、外部からの衝撃に対して足を防備する役割もある。

 

“履き易さ、外観の美的要素、外部からの保護”が先芯の役割である。

 

 大きさについては、上限に規定がある、先芯の深さ(靴のつま先からの距離)と言うことになる。

 

靴には歩行による前方屈曲点(指の付け根の屈曲部分)があり、屈曲幅の前方に当るところが、先芯の最高深さの基点である。屈曲幅は、ヒールの高低で異なり順応して先芯の最高点が定まる。反対に、前方に浅く小さい先芯は、作者の思惑で自由なことになる。

 

先芯底辺の線形も用途により作者の定める所となる。

 

ところで、先芯を使わない、入れない靴も存在する(前記役割を不要とすればOKのものである)。

 

 先芯の堅牢差については、材質品種、厚さ、作り、外郭部分の漉きの状態、さらには、釣り込みの仕様で変化する。一般的には、溶剤タイプ、床革、(一枚ものと剥ぎもの)銀付き革、などがある。外郭部分を漉き薄くするが、先芯の周りを漉くものと、天井部分は同高の厚さで外郭部分だけを漉くものとがある。

 

 銀付き革の場合は、靴型表面に貼り付ける側として、通常は床面とするが、反対に床面を上にして床面上を加工し、更に硬化させるなどの美的要素を重視した方法もある。

 

 また、銀付の革は、穴凹で叩き立体化しておくこともある、また、革の硬い場合は、靴型に仮釣りして立体化を図ることもある。

 

 先芯に使う糊は水溶性が通常である。床革は若干の水分を含むことで柔らかくなり、釣込みが容易になる。若干の水滴含有は、糊の浸透を助け、乾燥後は材を硬くする。しかし、水分の含有量が多すぎると、糊の浸透する余地がなくなり、材を硬化させることが出来なくなる。糊の滲み出しと共に水量に注意が必要である。

 

 釣込みについて。

 アッパーの表革と裏革の間に先芯を挿入する。両面には糊が塗布される、三枚が重なって、プレスする、または、プレスなしで靴型に釣込まれる(トウラスター、または、手釣込み)。この方法を、A全面釣りと言う。

 

比較して、先ず裏革を釣込み、完了して、その上に先芯を釣込む(この時点で先芯面の加工をすることがある)、そして芯の上に糊を塗布して、表革の釣り込みをする。要するに、三枚を別々に釣込む方法で、これをB単面釣りと言う。

 

理に適った正規の方法は、Bの単面釣りである、トウラスター釣込み、量産体制の中級品では手釣込みでも、Aの全面釣りの職人もいるが、欠点の多い釣込みの仕様である。

 

先芯の型紙も、靴型表面に完全密着後に外郭線を定めることを正規とするが、先芯型紙には内部にデザイン線がなく、外郭線形状と大きさの分類だけで、兼用が成り立ちやすい。従って、先芯は標準部品として確立される可能性がある。タイプの分類と大きさの分類が重要になってくる。 

 

 

 

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

<引用文献>

各務房男,「先芯についての考察。月型についての考察。中底についての所感。」,第63頁.

 

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■部品「先芯についての考察 」2016/01/14追加しました。

 

■2016/01/07記事追加しました。

・所感、雑文「製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない