かがみ式 問題事項の改善策

靴のスッポ抜け対策について

 靴がスッポ抜けるとう現象は、歩行に対して靴の踵部分の喰いつきが悪く、靴から足の踵部分が脱げ上がる状態を言う。

 当然に履きにくく、疲れる原因であり、歩行の姿勢も悪くなる。 従って、スッポ抜ける靴というのは、厳密に評価すれば足に合わない靴と言える。

 既製靴であれば、他の靴に替えてみる。注文靴であれば残念だが失敗、納品は難しい。

 対策の基本は、原因の追求にある。該当しそうな項目を抜粋して考慮する。

 

1. 後部足長比が合っているか。後方余裕寸法が妥当か。

2. 踵囲寸法のORVBGG対ORVDGG比が適切か。ORVDGGの内外比が足と合っているか。

3. 踵囲寸法だけでなく、形としたVV線角度を検討する。

4. 踵高対踵面角度が適切か。

5. 足踵横断面と靴との具合を見る(足が丸く、靴では楕円が好ましい形である)。

6. 靴滑り止めが適切か。RR線より上に機能していること。

7. トップラインが適切か。 低すぎないか。

8. 靴の返りが硬くないか。 足の返る位置と靴の返り位置が同位置であるかを見る。

9. 靴踵部分の重量が重過ぎないか。 前後の重量バランスを見る。

10. 靴裏革、中敷が滑りやすくないか。 中敷の糊剥がれがないか。

11. 靴爪先部分の厚さに関係して、指の支え具合を見る。

12. アッパーの歩行時の横空き具合を見る。

13. トウスプリングが適切か。

 などいろいろとあるが、重要条件は、足と靴との基本的部分の合いにある。 それから、踵部分の局部検討になる。

 

 また、形状、寸法などが適切であったとしても、靴作りにより左右されることもある。 例えば、靴が硬くて返りが悪ければ、スッポ抜けは起きやすい。

 

 以上、主として靴作りの対策であるが、踵部は足の個人差の大きいところである。

 特に、踵囲と踵幅とが合わなければ、靴のスッポ抜けは頻繁に発生する。

 個人差の大きいところだけに、既製靴では最も設定が難しく、踵部を万人に合わせることは不可能なことである。

 

 生産性を考えると、既製靴分類の中に踵部を入れることは難しい。したがって、靴の方に変化する機能を付け調節ができたらと思う。

 現在、中敷きを加工して、挿入パットで足合わせをしているのに似た方法も考えられる。

 

 しかし、何と言っても絶対な靴作りは、単個設計&工作である。

 そして、出てくる問題を解決する原動力は、やはり、工業的靴学(技術の分析)であり、基礎学の勉学が前提条件である。

 

 従来の製靴技術だけでは、将来の消費者の要望に答えられなくなる。 矛盾を解消した新技術に移ることが急務である。

 

 

 

パンプストップラインの変形ゆるみと開きについて(その原因と対策)

 トップラインの変形は開いても閉じても外観は悪く、誰もが気にするところである。

 変形については、「靴に触れなくても(展示の状態)変形してくるもの」と「靴を履くことにより変形するもの」に分けられる。

 

 前者は靴設計工作上に欠陥があり、製靴技術そのものを見直す必要がある。後者は足合わせの問題が含まれてきて、靴の選定ミスと言うことになる。

 しかし、どの足にも合わない靴も多く、選定ミス以前の靴作りにあるかもしれない。

 いずれにしても、原因は多岐に及んでいるものである。

 

 この件については、昔から問題視されているが、なかなか直らず困っている。

 一般に、トップラインのゆるみについての対策としては、VD部分のみの処理でよいと思いがちだが、それだけでは直らない。

 例えば、トップライン(UB FU YH VD)の寸法が長いと思い、VD部で短縮したとすると、B VB VDの曲線が変わる。

 今度はVB部分にシワが発生し、B部の釣込みが難しくなる。 これでは直したことにはならない。

 もし、トップラインの寸法が長いとしたら、靴型表面と型紙の同部位で対比して見ると、長い部分が判明する。この部分で、寸法を処理することが正解である。

 つまり、型紙の訂正&修正は、型紙の外郭線のみでなく、型紙の内部にある方が多いと言うことである(俗にいう反りがかわること)。 

それでは原因になる要素を記してみる。

足型と靴型の関係について

1. 足と靴の後部足長比が合っていない場合。踏付け位置が外れていては、底面にかかる体重によりトップラインが変化する。

2. 足のKP線と靴の同線とが適切でない場合。KP線は、外踏まず部分の体重のかかる所で、下方に力が強くかかると、必ずトップラインは変形する。

3. 踵囲寸法が合わない場合。また、踵面角度が、足よりも靴の方が平らな場合も、トップラインが変形する。

4. 歩行の癖でねじれ状態がある場合は、トップラインが変形する。

5. 内踏まずのアーチが合わない場合も、必ずトップラインが変形する。肉付き具合。

靴の設計&工作による問題点

1. 靴にねじれがある場合は、必ずトップラインが変形する。靴型自体にねじれがあるものと、靴だけにねじれが出ているものとがある。見所は、靴の前半と踵部を区分して見ることである(倒れ、ねじれ)。

2. 足と靴の後部足長比が合っていても、靴のLO部分の浮き上がりが大きい場合は、トップラインが変形しやすい。

3. 靴のRR線の肉付き、形状が悪いと、足で横に押し出し、トップラインが変形する。

4. トウスプリングが低く、返りの位置が悪いもの。

5. トップラインの凹位置が悪いもの。内外のバランスを見る。

6. 靴型表面と型紙が合わないもの。

7. 釣込みの力量が多大であったもの。

8. 靴型除去時間が早過ぎるもの。成型不十分。

 

型紙に関するもの

 型紙は、靴型表面に完全に密着していなくてはならない。しかし、パンプストップラインでは、若干の差をつける所がある。トップライン上ではわずかのマイナス、RR線上ではわずかにプラスとすると、トップラインの密着度が増すことになる。なお、俗に言う反りを付ける(型紙のVDの位置を若干上方に移動した状態にする)と靴型抜去後に効果がある。

 

釣込みに関するもの

 

 釣込みの要点は、引きが強過ぎないことである。

 特に、爪先Aを強く引くと、靴型抜去後のトウスプリングの上昇に起因する変形が大きい。

 トップラインを密着させるには、前方に引くのではなく、テコの応用のようにすることが良い(VDを若干上に置き、引き下げることで、トップライン上に力を加える)。

 無理な力が加われば材の移動が始まり、それが変形である。

 また、正当な力量で釣込める、正確な型紙が必要である(型紙の詳細は専門編参照のこと)。

 

 以上、のようになる。

 

 もともとトップラインの変形とは、資材の移動状態であり、材にかけた力量で左右されるものである。その原点は、靴型表面と型紙面との対応状態、アッパーを靴型表面に引っ張り込む力量が大きく影響するものである。

 従って、最も重視するのが、型紙の内容と、釣込みの内容にあり、矛盾のない処理をしたいものである。 

 

 

 

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

 

<引用文献>

各務房男,「かがみ式 問題事項の改善策」,第1版23頁.

 

 

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■部品「先芯についての考察 」2016/01/14追加しました。

 

■2016/01/07記事追加しました。

・所感、雑文「製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない