ハイヒール靴の製靴技術について考察する

 ハイヒール靴は、足の健康面から見ると、決して良いとは言えないが、不可欠な靴である。

 たとえ足に障害が出ようとも需要のある事は、“足に合い履きやすい”研究を疎かに出来ない事である。

 また、高級感のあるハイヒール靴は、作る側でも魅力のある存在で、昔から評価の高いものである。

 

 平面足から踵を上げていくと、足形状の変化は著しい。踵が上がると体重は前方にかかりやすく、前方に滑りやすくなる。それに対応するために、足指に力が入り踏み付け、反動的に指先部分が湾曲し高くなる。MB部分が上昇し厚くなり、指の長さは若干縮小する。

 

 踵上昇の際の屈折部は、E線上と踵面の顎部線上(Q線&J線)にある。

 E線の状態は、第一中足骨から第五中足骨が斜線であるため、踵の上がりは、外側方向に向かいやすく、膝頭は外側になる。一見O脚状態を想像するが、実状は、ほぼ直上方向に踵は上がるようである。

 踵面は、外側よりも若干内側が高くなる。踏まず部分の屈折は顕著に現れる。

 外踏まず部は力が入り直線的になり、内踏まず部は屈曲の状態になる。屈曲の頂点は、踵の高さ(踵芯の高さ)により移動し、高くなる程に後方になる。平面足ではKO部分であるが、踵上昇に伴いQO&JO部になってくる。

 

 足裏面の体重分布は、平面足では後方にあるが、踵高に伴い前方に移動しやすくなる。そして体重分布の状態は、前後の移動が頻繁に交互する。踵幅は概して細くなる様に見える。踏み付け部は力が入り、幅は広く、天井(高さ)は低くなる。つまり、足甲囲の断面図型が変化する事である。

 

 このような足型に合わせるハイヒール靴は、難しい事であり、簡単ではない。

 

 

 古今東西、昔から注文靴にもハイヒール靴は存在した。どの様にして処理してきたのか振り返ってみる。

 

 千差万別にある靴型は、どの様にして作られたのか。

 定かでないが、ほとんどが“分裂方式”によるものが多い。原型靴型の一部を変化して新型にする方法である。そしてまたその靴型の一部を変化して、新型が誕生する。この繰り返しで、様々な靴型が誕生してきた。

 難しいハイヒール靴型を、材木柱から切削する能力は、一般にはない。

 

 注文靴用靴型も、この様にして既存靴型から調整して使う事がほとんどである。問題は、調整の仕方である。

 顧客の足型計測は、平面状姿勢で行う。フットプリントを描き、甲囲をメジャーで測る。この二箇所の計測が通常である。測った位置に印を付け、内踏まずの凹み具合を鉛筆で描く。

 線描きと、寸法測定はその位で、大切なのは足型の感覚的観察である。足の凹凸、たこマメ、きず、など、その他、圧迫の好みを聞き取る。

 それから、カーブした靴型底面にフットプリント紙を押し当てて、靴と足型を比べて見る事になる。

 いずれにしても、頭脳内にある足型を連想して調整する事であり、足甲囲の寸法×コロシ率も曖昧にして、足の計測位置と靴型計測位置の合致性のない技術である。これでは、足計測数値を靴型に生かすことはできない。

 

 足数値を靴型設計に使うには、靴型と足は同姿勢であり、両者の計測位置は合致している事が条件である。足型の様子を把握するためだけの足型計測と、靴型設計に用いるための足型計測とは、根本的に異なる。

 

 現状の「足長」の計測は、爪先点から踵点間を、平面足裏面で計測している。しかし、踵が上がると、足長は、部分で伸びる所と短縮する所が生じる。そのため、ハイヒールでは、平面足の「足長」をそのまま使用するのではなく、甲部足長、中央部足長、裏面部足長と分けて考える必要がある。

 しかし、実際には、それらを考慮することなく、靴型の設計が行われているのが現状である。

 

 ここで言いたい事は、従来からの感覚的技術でハイヒールの設計は、不可能に近いという事である。

 

 

 

 

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

 

 

<引用文献>

各務房男,「ハイヒール靴の製靴技術について考察する」,第9版74頁.

 

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■部品「先芯についての考察 」2016/01/14追加しました。

 

■2016/01/07記事追加しました。

・所感、雑文「製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない