ローヒール、中ヒール、ハイヒールの靴型設計 主な違いについて

 靴の踵にはヒールが付き、重要な役割を持っている。ヒールは、機能的な関係と共に、形状と高さも、デザイン的に関心の高いものである。正確に形状、高さを定めることは、設計の重要項目であるが、大略的にはローヒール、中ヒール、ハイヒールの様に区分して呼んでいる。

 ここでは、踵の高さが異なることで起こる現象を見ながら、靴型設計に当たり、踵の高さが変化することで考慮すべき問題点を挙げる。

 

・足長について

 靴型設計で考察する足長は、一般的に足長と言われている足裏長だけではなく、足中央長、足甲長、の3カ所を見る。踵が上昇するに準じて、伸張する所と縮小する所が生じてくる。踵の低い場合は許容が大きいが、ハイヒールになると重要問題になる。踵が高くなると、足長も一律ではなく変化することを、認識しておかなくてはならない。

 

・靴型全長について

 靴型全長は、足長に後方余裕寸法と前方余裕寸法、そしてつま先の形を作る形状調整寸法を加えて考えるものである。しかし、いずれも踵高さに関連して定まるもので、一律ではない。例えば、踵部の余裕の必要性は知る所であり論議されるが、これも一定のものではない。踵芯高に関連することである。

 

・つま先部分の厚みについて

 踵が上昇すると、体重が前方に掛かりやすくなり、足の前進を止める動きが生じ、指部に力が入り指が曲がり高くなる。従って、ヒールが高くて、爪先の薄い靴型は理に合わない。

 

・踏まず部について

 踵が上昇すると、踏まず部の足裏アーチの凹凸は強くなり、最上部点は後方に移動する。つまり、アーチ曲線が強くなり、曲がる部分が後方に移動するのである。これは、靴中底と本底の間に入れるシャンクバネの形状に関連し、シャンクバネの設計に当たり考慮すべき問題になる。一律のシャンク形状では矛盾が生じてくる。

 

・踵面角度について

 踵が上昇すると、踵面角度も変化してくる。踵芯高と踵面角度の対比関係は、ヒールの高い靴型では最重要項目になる。この数値は足と靴型では大きく異なる難しい所である。

 足だけの計測実験では靴型の適正値を求めることは出来ない。靴と足との対応検査が必要である。“かがみ式”検査仕様では、実施、基礎表としてあるが一般的にはない。どの企業でも、必要性は認める所ではあろうが、実験の習慣のないところでは、把握することの出来ないものである。

 

・靴型底面形状(横断面)について

 踵部面の落差寸法は、踵の高いものは大きくする。つまり、踵を凹みに落として足の前進を防ぐ。

 踏付け面の形状も踵芯の高低で異なる。踵が高くなると、踏付け部点と踵芯点との距離が小さくなる。つまり、両者の接地の間隔時間が短縮する。そのため、安定を意識して踏付け面を平らにする。

 

・甲囲寸法について

 平面上で計測した足甲囲寸法と、踵の上昇姿勢の甲囲寸法では異なることに留意する。計測位置は通常6ヶ所(かがみ式)であるが、各部位で差のあることも忘れてはならない。

 

 ここで大切な事がある。足甲囲の計測位置である。足の場合はメジャーと肌との摩擦でどこでも測ることが出来る。ところが、靴型になると斜面状の所はメジャーが滑り、正確には測れないことがある。不正確では測定の意味はない。対応策として、靴型の測定位置を前方に移動する処置をとる。例えば、UB,LB,KB,QB,JBの測定点を、傾斜の強い上方(足首より)に行くほど、前方に移動する率を大きくとるようにする。当然ながら、足と靴型の測る位置は同部位でなくてはならない。この位置の移動は、基線配列定規を用いて行う。この定規で足の計測位置も定まる。

 

・靴型の形状(側面)について

 踵が高くなると、ヒールの上から足の踵が外に移動しやすくなる。この防止策が月型の役割である。月型を入れる靴型の踵幅は、踵が高くなるほど短縮し、しっかりと足を挟むようにするのが通常である。そして、側方の凸線(RR線)は、踵部分では体重が掛けやすいように低くして、前方は足を包みやすいように高くする。

 

・踵囲の変化について

 踵囲の変化は当然の事である。具体的には、ORVBGGとODVDGGの対比の事であるが、踵の高低で大きく変化する。また足の個人差も強い所であり、難しく注意が必要である。特に既製靴型設計では、頭の痛い所である。

 

 

 以上、主なる部分であるが、靴型設計に当たり、踵の高さが変化することで考慮すべき問題点を挙げた。

 

 既存の踵の低い靴型から、踵を高く修正するなど、聞く事であるが、正確に修正出来るとは思えない。甲部にV字の切り込みを入れて踵を上げるなど、外観に捉われた部外者の作業で、靴型の内容を無視した操作である。また、外国製靴の中に石膏を入れて靴型を再現することも聞くが、崩れた靴の中身が採れるだけである。その靴型で靴を作り原型と比較して見れば解かるように、崩れた靴より再度に崩れた靴が出来ることになる。

 

 現在の靴型設計技術は、感覚的技術と言えるもので、靴型設計技術者は不在の感である。流行に合わせて、つま先部分のスタイルを調整変化したり、踵後方部や爪先前方部をカットするようにして、取り替えたりして新型の靴型を作っている。しかし、外観変化のみを安易に行えば、足との対応を無視することになる。

 

 靴型設計の勉学は既存靴型の模倣だけでは成立しない。原理原則に従って実験を行い、実験値を数値的に解りやすくまとめる事が大切である。靴型本来の基本事項の勉学も必要である。

 

 

  

(この文章は、各務房男が執筆した論文を、 編集スタッフが許可を得て、要約、加筆修正したものです)

 

 

<引用文献>

各務房男,「ローヒール、中ヒール、ハイヒールの靴型設計 主なる違について」,第7版6頁.

 

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■部品「先芯についての考察 」2016/01/14追加しました。

 

■2016/01/07記事追加しました。

・所感、雑文「製靴技術は、靴有史以来の感覚的靴技術から発展していない